「金持ちクラブ」に加盟していた。
その「クラブ」の会合は、毎月一回、某有名ホテルで開かれていたのだが、わたしはその会合には出席しなかった。
わたしが出席した会合は、年に二回ある「料理研究会」と、「庭園愛好会」だけである。
しかし、この二つのクラブは、いずれも「メンバー」であった。

「料理研究会」とは、わたしが最初に籍を置いていたクラブの名である。
会員数は五十人程度で、その会員の多くは、料理学校の講師や調理師であり、わたし自身も、十年間この会に所属していた。
そして、わたしはこの会の顧問をもつとめた。

「庭園愛好会」とは、わたしが二番目に籍を置いたクラブである。
会員数は百人くらいで、この会は、庭園を専門に研究する専門家によって構成されていた。
この二つのクラブは、ともに「会費」を納めて入会したクラブであるから、どちらの会も、一年余り在籍して退会し、その後は二度と参加しなかった。
つまり、わたしは「会員制クラブ」の会員だったのである。
ところで、これらの三つのクラブが、わたしにとってどのような意味をもっていたかといえば、それは次の通りである。
第一に、それぞれのクラブは、わたしの属している職業団体と密接な関係があった。
すなわち、どのクラブにおいても、わたしの属している職業団体の支部があり、その支部長たちは、すべて会員として所属していた。
第二に、各クラブとも、わたしを含めて数名ずつのメンバーがいた。
第三に、いずれのクラブでも、定期的に会合が開かれていた。
第四に、どのクラブにおいても、それぞれ専門の部会が設けられていた。
そして第五に、どの部会にも、必ず何人かの専門家が所属しており、その中には、著名な造園家や園芸家が含まれていた。
わたしは、このような組織の中で、自分の専門とする分野を勉強することができた。
また、そのような機会が与えられるということは、たいへんありがたいことであった。
たとえば、「料理研究会」では、季節ごとの旬の食材について学びながら、同時に、料理についての専門的な知識を身につけることができた。
そして、その講座が終わると、料理の実演が行なわれた。さらに、「庭園愛好会」においては、造園学の講義を受け、その後、庭造りの実技指導をうけた。
このように、わたしは自分の専門分野を磨きあげるとともに、他の分野のことも学ぶことができた。

