金持ちクラブとは

金持ちクラブとは、いったいどんなものか?
それはおそらく、この世でもっとも奇妙なクラブだろう。
メンバーは、それぞれ自分の欲望に忠実で、他人の意見など聞かない連中ばかりだ。
彼らは自分勝手な意見をいいたてては、他人の足を引っ張るのが大好きなのだ。
そして彼らがもっとも好む話題はといえば、他人にはどうすることもできないような、不合理きわまるものだ。

たとえば、ある男が、自分が宇宙で一番偉大な人間であると信じこんでいるとする。
その男は、自分は神に選ばれた特別な存在だと思いこみ、自分の思いどおりにならないものはすべて悪だと考えているのだ。
しかし、こうした考えかたこそ、まさに偏見というものではないか。
人間は、それぞれちがいのある存在であって、それぞれの価値観を持っている。
そのことは認めるべきだ。
だが、そうした事実を無視したり無視させようとしたりする者が多すぎる。

われわれはみな、ひとりひとりちがう人間であり、それぞれに個性をもっているのだ。
それを認めようとしない者は、愚か者以外の何物でもない。
わたしはまた、人間の心の弱さについても考えてみたいと思う。
人はしばしば、自分自身の考えや感情を正しいと思いこむ傾向がある。
ときには、それが行きすぎて、誤った判断を下してしまうこともある。
だから、人間が何かを決定するときは、つねに慎重にならなければならない。
とはいえ、ときに人は、自分の信念が正しいかどうかを知るために、あえて誤りを犯してしまうことがある。

これは人間にとって避けがたいことかもしれない。
しかし、過ちを犯したとわかったら、すぐに訂正しなければいけない。
一度でも自分の考えに固執してしまえば、もう二度と取り返しのつかないことになるからだ。
いま、わたしはある人物について書いているのだが、この人物は、自分がこれまで信じてきたものを疑おうとしている。
たぶん、彼は、自分の人生のなかでいちばん大切な時期を迎えているのだろう。
彼の人生の目標は、彼がずっと追い求めていた理想を実現することだからね。
その目標に向かって一歩ずつ近づいているところなんだ。

しかし、その過程で、これまでに培ってきた考え方に疑問を持ちはじめてしまったんだ。
おそらく、その疑問というのが、彼を迷わせてしまっている原因のひとつなんだと思う。
もし、この人物が、自分の信じていることに対して自信を持てるようになることができたとしたら……そのとき、彼は大きな成功を手にすることができるはずだ。
しかし、まだ時間が必要なようだ。
この人物は、これからも努力を続けていくつもりらしい。

ところで、こういう話はおもしろくないかな?
じつは、わたしもこの話を書くのが好きじゃないんだよ。
というのは、こんなふうに考える人もいるんじゃないかと思ってね。
つまり、だれかが自分の人生をすばらしいものにしようと決心したとき、その計画を実行するにあたって、必ずといっていいほど、いろいろな障害に出会うということだよ。
わたし自身にも、そういう経験がある。
そして、このような経験は、だれの人生においても起こりうるものなのだということを、ぜひ知ってもらいたいと思っている。
どんな人間にとっても、自分が生きている世界というものがある。
この世界を創造した神様がいるとすれば、そこにはきっと、たくさんの試練が用意されているにちがいない。
だが、あなたはそんなことを気に病む必要はない。
なぜならば、あなたのそばには、いつも最高の友だちがいて、あなたの悩みを聞いてくれるからである。
さあ、いっしょに、その友人の話をしようじゃないか!

きみがこれから出会うであろう友人のうちのひとりは、ある男の物語を書いているところだった。
この物語の主人公の名前は、J・R・イライザ。年齢は三十二歳。独身で、ニューヨークに住んでいる。
イライザは、作家志望者が集まる雑誌〈ニューヨーカー〉の編集者をしている。
そして、いままでに数多くの小説を書いてきた。
しかし、彼には欠点がある。
それは、けっこうな想像力をもちながら、それを実際に生かすことができないという点である。

タイトルとURLをコピーしました