金持ちクラブ

金持ちクラブ という名前のこのサイトを始めました。

サイトの基本情報を書いておきます。

管理人名:金持ちクラブ

サイト名(サイトの名前):金持ちクラブ

サイトURL:https://108.1-23456789.com/

金持ちクラブ というサイトを公開したのは2022年 2022年3月26日。

「おや、これはこれは……」
「あっ!?」
ふいに後ろから声をかけられて、わたしは思わず振り返った。
そこに立っていたのは、どこかで見たことのある男だった。

年齢は五十代半ばぐらいだろうか? ロマンスグレーの髪と、穏やかな笑みをたたえた口元が印象的な紳士だ。
この人……確か、あの日、バーで会った……。
「お久しぶりですね。ご挨拶が遅れて申し訳ありません。私は、こういう者です」
そう言って差し出された名刺には、『金持ちクラブ』という文字が書かれていた。

「えっ、じゃあ、あなたも会員なんですか?」
「はい。実は私もこの店の会員なんですよ」
「そうなんですか! わぁ、奇遇ですね!」
まさかこんなところで知り合いに会うなんて思わなかった。
わたしは嬉しくなって、つい笑顔になる。
すると彼は目を細めて微笑んだ後、「よろしかったら、少し話しませんか?」と言ってきた。

もちろん断る理由はない。
わたしたちは近くのテーブル席に向かい合って座ると、飲み物を注文した。
それから互いに自己紹介をして、話し始める。
「お嬢さんは、どうしてこちらへ?」
「実はちょっと探し物をしていて……それで、ここなら見つかるかもしれないと思って来たんです」
「ほう、それはどのような物でしょうか?」
「それがよく分からないんですけど、何かキラキラ光る物が欲しいんです。宝石とかでも構いません」
「なるほど、そういうことでしたら……ああ、ちょうど良いところに来ましたね」
彼が視線を向けた先にいたのは、若い男性たちだった。

彼らは四人組で、いずれも二十歳前後といったところだろう。
その全員が、高級ブランドのスーツに身を包んでいる。
おそらく大学生だと思うけれど、なかなかお洒落な人たちだ。
「あれって、ひょっとして『金持ちクラブ』のメンバーじゃないですか?」
「そうだよ。彼らも私たちと同じく、ここで定期的に会合を開いて情報交換をしているんだ」
「そうなんですか」
ということは、彼も会員の一人ということかな?
「では、早速彼らに聞いてみるとしよう」
そう言うなり、彼は立ち上がった。

そして、そのまま真っ直ぐに彼らの方へと歩いていく。
他の客たちも、何事かという目つきで彼のことを見た。
そんな注目の中、男は堂々と胸を張って尋ねる。
「失礼、少々お尋ねしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」
「はい、僕たちに答えられることであれば何でもどうぞ」
リーダー格らしい男性が、爽やかな笑みを浮かべて答える。
「ありがとうございます。実は私も、とある目的でここに出入りしている身なのですが……」
「おお、それは奇遇ですね! 僕も同じですよ」
「ほう、それは素晴らしい偶然ですね。ちなみに何を?」
「僕は株取引をやっています。これからもっと値が上がる銘柄を探すために、色々と情報収集をしているんですよ」
「なるほど、そういうことだったのか」

男が納得した様子でうなずくと、他のメンバーたちも会話に加わる。
「俺は不動産投資をやっているぜ。まあ本業の合間に趣味程度だけどな」
「私は株で資産運用しています。今はかなり調子が良いので、もう少し増やす予定です」
「僕はFXをやってます。まだ始めたばかりなんですけど、結構稼げてるんですよ!」
「ほぉ、みんなそれぞれ頑張っているようだね」
男の称賛の言葉を受けて、メンバーの皆さんは照れくさそうに笑う。

わたしはというと、話の輪には加わらずにその様子を眺めていた。……なんだか、すごい世界だなぁ。
「あの……ところで、そちらの方は?」ふいに一人の青年が男に向かって問いかけた。
すると、彼はハッとした表情になって振り返る。
「おっと、これは申し訳ない。私はこういう者です。以後、お見知りおきを」
そう言って差し出された名刺を受け取って、青年たちは一人ずつ順番に確認していく。

「えっと……『金持ちクラブ会長』……」
「『金持ちクラブ』って、あの会員制の?」
「ああ、俺も噂ぐらい聞いたことはあるぜ。なんでも金持ちしか入会できないっていう……」
「すっごーい! まさか本物に出会えるなんて!」
驚くメンバーたちを見て、男は満足気に微笑む。

「はっはっは! いかがでしょう? 私もなかなかのものでしょう?」
「ええ、本当に驚きました!……でも、どうしてこんな場所に?」
「実は私も探し物がありましてね。そのヒントを求めてやって来たんですよ」
「へぇ、そうなんですか! どんな探し物を?」
「実は、キラキラ光るものを探しています」
「キラキラしたものですか?それなら、この店にもたくさんありますよ! 例えば、あそこにあるネックレスなんかオススメですね!」
メンバーの一人が指さしたのは、ガラスケースの中に飾られたダイヤの指輪だった。
それを目にして、男はニヤリと口角を上げる。「ほう、これは確かに美しい輝きを放っている。実に見事なお品です」
「えっ!? そ、そうでしょ! すごく綺麗ですよね!」
「はい。しかし残念ながら、私が求めているのはそういったものではありません。もっと別のものでして」

「そうなんですか?……じゃあ、他に何かありましたかね?」
首を傾げるメンバーに対して、男はおもむろに告げる。
「実を言うと、私の目的はただ一つだけ。……それは、素敵な女性と出会うことです」
「…………へ?」
いきなりの言葉に、わたしは思わずポカンとなる。

他の面々も同様に呆然としていたけれど、いち早く我に返ったリーダーが言った。
「……いやいやいや、それはいくら何でも無理があるでしょ」
「ふふ、どうやら、心配は無用のようですよ」
「えっ、どういう意味ですか?」
男が視線を向けた先にいたのは、なんと若い女性だった。
彼女は店内にいる男性たちの視線を一身に集めている。
その光景を眺めて、男は静かに語り出した。
「この店での出会いは、男女の枠を越えて起こり得ることなのです。
つまり、ここならば私も貴方のように可愛い娘さんと出会える可能性があるということ。
だから私は今日という日を待ちわびていました。そう、私はずっとこの時を待っていたのです。……さて、どうか私の手を掴んで頂けませんか?」

「……はい?」
唐突に差し出された手に、女性は困惑気味に顔を見返す。
すると、男は真剣な眼差しで言葉を続けた。
「突然の申し出に驚かれたかもしれません。しかし、決して冗談などではないのです。私は本気で貴女に恋焦がれております。だからこそ、こうして勇気を振り絞って声をかけたのです」
「こ、こい……?」
「はい。もしよろしければ、私とデートをしてください。そして、私と一緒に夢の世界へと飛び立ちましょう」
「ゆ、ゆめ?」
「ええ、そうです。これから先、私たちの人生には様々な苦難が待ち受けていることでしょう。時には辛いことも起こるはずです。ですが、そんな時こそ思い出してほしい。……私たちは二人で手を取り合い、共に乗り越えていけるはずだと」
「……」
「そして何よりも、お互いの心さえ寄り添うことができれば、きっと素晴らしい未来が訪れる。私は信じています。これから先の人生で、愛する人と過ごす時間がどれだけ尊く幸せなものであるかを。……ですから、どうかご一考をお願いします」
そこまで言うなり、男は深々と頭を下げる。

「……」
女性の方はというと、無言のまましばらく固まっていた。……だけど、やがてゆっくりと彼の方に手を伸ばす。
そして、その手のひらをギュッと握り返した。
「ありがとうございます! では早速、今度の日曜日にでも一緒に出かけませんか? もちろん、ご都合の良い時間に合わせますので!」
男の嬉しそうな反応を受けて、女性は恥ずかしそうに俯きながらも小さくうなずいてみせた。
「ええ、ぜひ喜んで」

「おおっ、本当ですか!?……ああ、良かった!これでようやく一歩前進できました!
まさかこんなにも早くチャンスが訪れようとは! やはり運命とは不思議なものですね!」
感極まった様子で叫ぶ男を見て、周囲の方たちも口々に祝福の言葉を述べる。
「おめでとう! お幸せに!」
「末永くお付き合いを続けてくださいね!」
「お二人の輝かしい未来のはじまりですね!」
「いやぁ、感動しましたよ! お二人には本当に感謝しています!」
「お二人が出会ってくれたおかげで、僕も新しい世界に踏み出すことができそうだ!」

「ありがとう! 本当にありがとう!」……あれ?なんかおかしいぞ? いつの間にか、わたしまで巻き込まれているような……。
「あ、あのぉ……」恐る恐る声をかけると、全員の注目が集まってしまう。
「あっ、ごめんなさい!つい盛り上がっちゃって!」
「すみません、こちらの方もお祝いさせて下さい」
「えっと……よ、よかったですね!」
「うん、ありがと!」
「俺からも言わせてもらっていいか? 君のおかげで、俺は変われる気がするんだ!」
「あ、はい。頑張って!」
「ありがとう。よし、次はお前だ!」
「ええっ!?」

(続く)

2022年3月29日 午後10時52分

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